プログラミング的なSomething

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ITエンジニア(?)目線で生活・自転車・トレーニング話を綴ります

ジムに通わない人こそ読むべき「ジムに通う人の栄養学」

「ジムに通う人の栄養学」と聞くと、ジムに行かなければ効果がないような印象を受ける点が、この書籍の弱点ではないか。私はむしろ「ジムに通わない人」こそ、本書で効率的なダイエットやトレーニング方法を模索すべきだと考える。

インターネットのアンケートによると、「スポーツクラブ・フィットネスクラブを利用している人」は人口割合でおよそ10%弱だ。では本書はこの10%弱、あるいはこれからその10%弱の仲間入りをする人だけに恩恵をもたらすかと言うと、明確にNoと断言できる。本書はダイエットする人(ダイエッター)や様々なスポーツ愛好家に応用可能だ。

本書の価値

個人的な見解になるが、本書の価値は「運動をする人の思い込みを排除」してくれることだと考える。例えば、「スポーツドリンクは薄めた方がいい」という思い込み。本書はこれを明確にNoと否定する。

私は人やネットから得た知識でスポーツドリンクは塩分濃度が高いから飲む際は薄めた方が良いと考えていた。しかしそれには根拠がないのだ。例えば私が誰かから「ではどの程度の塩分濃度がスポーツドリンクとして適切か?」と聞かれたら、答えに窮してしまうだろう。他人の言葉を盲信しているだけだからだ。

本書はこうしたさも当たり前のように横たわる「スポーツドリンクは薄めた方がいい」という常識を、データを以て解明してくれる。ここで使われた値は「運動時の1時間あたり消費水分量500−1000ml」と「運動時の1時間あたり消費炭水化物量30-60g」だ。こうした豊富なデータから、「スポーツドリンクではなく、水と携行食で補完するとどの程度の補給量になるのか」といった応用も可能だ。こうした効果は体系的にまとまっている書籍でしか得られない利点だ。

ジムに通う人の栄養学 (ブルーバックス)

ジムに通う人の栄養学 (ブルーバックス)

思い込みは気付かないまま進行する

スポーツドリンクを薄めるべきではない」と自信を持って言える人にも本書は有効だ。何故なら思い込みは誰にでもある上、自分では気付きにくいものだ。検索ワードが思い浮かばない状態で何かを調べることは不可能であるように、思い込みを誰からの指摘もなしに是正することはできない。

あまりにも当たり前かもしれないが、殊、運動やダイエットのことになると情報過多になり、他人の成功事例や宣伝に惑わされてしまう。繰り返しになるが、書籍で体系的に知ることができるのは大きな利点だ。甘言だらけのダイエット食品の商品説明を熟読する前に、落ち着いて本書に取り組み、何をすべきか考えるのも悪くないのではないか。

スポーツドリンクだけでなく、本書には「たんぱく質摂取と筋肥大の本当の関係」、「食事制限だけで痩せた場合と運動を併用した場合の体組成の違い」、「ダイエット・トレーニング時の食事」に関わる思い込みの是正の記述があった。これは私の個人的な感想なので、人によってはもっと多かったり少なかったりするだろう。

まとめ

本書をまとめると以下のようになる。

  • 運動やダイエットにありがちな常識を、データ・エビデンスをもとに解明
  • ジムには実は「トレーナー」がいるので、間違った常識を詰め込んでしまった「ジムに通わない人」にこそ勧めたい

しかし、「ジムに通う人」と銘打ってしまうとなかなか敷居が高く感じてしまう。同じブルーバックスから出ている「ジムに通う前に読む本」は、タイトル的に対象読者が広くて手に取りやすくうまかったように思える。こちらの本はジムで運動する前のウォームアップや各運動の体の使い方、怪我した場合の処置といった実践的かつ基本的なことが書いてあり、「ジムに通う人の栄養学」よりジムに通う人に向けて書かれています。

ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング (ブルーバックス)

ジムに通う前に読む本―スポーツ科学からみたトレーニング (ブルーバックス)